原発性骨髄線維症(PMF)

原因

骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、造血幹細胞がクローン性に増殖する疾患であった。PMFもMPNの一種であり、造血幹細胞の増殖が繊維芽細胞の増殖につながり、骨髄が線維化してしまう。しかし、PMFは他のMPNと大きく違う点が一つある。それは疾患の原因細胞である線維芽細胞が*造血幹細胞*由来ではないということである。造血幹細胞の増殖がただちに線維芽細胞の増殖に繋がるわけではなく、いくつかのステップを踏む。PMFにおいては造血幹細胞の異常増殖によって、大きく増加する細胞は巨核球系の細胞である。巨核球は血小板を産生することがよく知られているが、同時にサイトカインも産生する。そして実際に分泌されるTGF-βやPDGFといったサイトカインが線維芽細胞の増殖を促進する。そのため、PMFによって増殖する細胞のうち、巨核球は異常なクローン細胞であるが、線維芽細胞は全くの正常である。そうして増殖した線維芽細胞によって骨髄が線維化することになる。

髄外造血

PMFの大きな特徴として髄外造血が挙げられる。骨髄が線維化してしまい、造血を行えなくなるの他の場所で造血が起きる。造血というのは基本的に骨髄で行われるのだが、胎児の頃は別の場所で行われていることを覚えているだろうか。造血器官は、胎児初期は卵黄嚢でその後に、肝臓・脾臓へと、最終的に骨髄へと移行していくのであった。そして髄外造血はこのかつての造血器官で造血が怒る。卵黄嚢はもう存在しないので、肝臓・脾臓で造血が行われる。ちなみにどちらかというと脾臓の方が割合が高い(過去問でも出てる)、そのためPMFでは巨大脾腫が見られる。病見えにのっていたCT画像がすごくわかりやすかったので載せておく。

骨髄線維症による巨大脾腫

ちなみにこの髄外造血というのはあくまで不完全な造血である。そのため、血液の所見は結構特徴的である。まず1点目として、骨髄における造血では血球は成熟してから末梢血にでてくる。しかし、肝臓・脾臓における造血では未熟な状態の血球が末梢血に出現する。顆粒球(好中球とか)の未熟な形態である幼若顆粒球や赤血球の未熟な形態である赤芽球が血中に現れるのである。この状態を白赤芽球症と呼称する。白血球と赤血球両方の未熟な血球が見られるからそう言うのだろう。そして、成熟した赤血球も奇形がある。そのため末梢血を覗いてみると涙滴赤血球が見える。ついでなので画像も載せておく。

涙滴赤血球

dry tap

PMFで一つ重要な所見としてdry tapが挙げられる。骨髄が線維化するので、骨髄がdryになる。どういうことかというと正常な骨髄には骨髄液という液体が豊富に含まれている。だからこそ骨髄穿刺をすればその液体を採取できて骨髄細胞の様子を顕微鏡で見ることができる。しかしPMFでは骨髄が線維化しており、骨髄液が少なくなっている。そのため骨髄穿刺したにもかかわらず骨髄液が採取できないということがしばしば起こる。この現象をdry tapと言う。

そしてさらに重要なのは次にどうするか?だ。骨髄液の採取に失敗したらどうしたら良いのだろうか。ここで骨髄の検査を諦めてはいけない。骨髄の病気なので何がなんでも骨髄細胞を調べたい。液体が取れないなら固体で採取すればいい。骨髄生検だ。めちゃくちゃ太い針を使って骨髄組織ごと削りとってくる。骨髄穿刺と骨髄生検の違いは重要だ。

JAK2遺伝子変異

JAK2遺伝子変異といえば真性赤血球増加症(PV)が有名だが、PMFでも半分ちょいくらいは陽性になる。本態性血小板血症でも同じくらいの割合で陽性になるので併せて覚えておこう。