慢性骨髄性白血病(CML)②

フィラデルフィア染色体

CMLでは、9番染色体と22番染色体の転座、すなわちt(9 ; 22)が非常に頻繁にみられ、これによってフィラデルフィア染色体という非常に重要な異常染色体が出現する。このフィラデルフィア染色体の上には、BCR-ABL融合遺伝子という腫瘍性増殖の原因となる遺伝子がコードされていて、これが白血病の直接の原因となる。

もうちょっと細かく説明する。BCR-ABL融合遺伝子は、9番に存在するc-ABLというチロシンキナーゼ(ここ大事)が22番BCRという遺伝子のところへやってくることで生じる。そのためBCR-ABLもまたチロシンキナーゼということになる。じゃあ何が違うかというと活性化の度合いだ。BCRはチロシンキナーゼの強化呪文だと考えたらわかりやすい。BCRという助けを得たABLは無制限に造血幹細胞を増殖させ、CMLを発症させる。

ちなみに、チロシンキナーゼというのは、チロシンをリン酸化する酵素という意味だが、細胞ではこのチロシンのリン酸化がめぐりめぐって増殖シグナルとなる。

治療

ほぼすべてのCMLにおいて、BCR-ABLというチロシンキナーゼが原因となっているので、ここを止めに行くのが一番賢いというのは誰でもわかる。そういうわけで第一選択は、チロシンキナーゼ阻害薬だ、TKIとも呼ぶ。最も有名な薬剤はイマチニブだろう、商品名はグリベックだ。しかし、イマチニブは完璧ではない。効果を高めたり、耐性を持った白血病細胞にも対応できるように、第二世代、第三世代とより先進的なTKIが開発されている。ちなみにこれらの薬剤の語尾は全てチニブである。

調べてみると、Tilosin Kinase Inhibitorでtinibとなっているらしい。ちょっと無理やりな気もするがまあ覚えやすい。ちなみにこの薬の語尾は結構面白い。個人的にへーと思ったものを一つ載せておく。

プロトンポンプ阻害薬につく語尾である「-prazole」(オメプラゾール、ランソプラゾールなど)は、機能と構造を両方反映しています。これらは、プロトンポンプ(proton-pump)のprと、医薬分子に含まれるアゾール(azole)という部分構造から命名されたものです。

TKIの副作用

皮疹、浮腫、悪心・嘔吐、お金がかかる