交差適合試験(cross matching)

交差適合試験というのは輸血の際に行われるテストで、赤血球凝集が起こらないことを確かめるために行う。このテストをちゃんとやらないと輸血した時に拒絶反応が起きてしまう可能性が否定できない。このtestを理解するためには赤血球凝集とはなんのなのか?、どういう時に起こるのか?ということを抑えておく必要がある。

赤血球凝集(ABO式血液型)

赤血球凝集とは抗原抗体反応である。つまり、免疫反応ということになる。要するに、自分の体内に入ってきた他人の血液を異物と認識して攻撃するってことになる。じゃあどうやって自分の赤血球と他人の赤血球を区別しているのか?という話になってくる。当然、その1つは血液型になる。A型の人はA抗原が赤血球に表面に発現しているし、B型の人はB抗原が発言している。だからといってO型の人はO抗原が発現しているわけではない。A、Bどちらの抗原も発現していないだけだ。だから、O型の血液というのはどの血液型の人にも輸血ができる。

当然だが、自分の体内にある赤血球の抗原の抗体は存在してはいけない。A型の人が抗A抗体を持っていたら、自分の体内で赤血球凝集が発生してしまうし、B型も抗B抗体は持っていない。その代わり、自分の体内にない抗原に対しては、抗体を持っている。自分の体内にない抗原が体内にいる、という状態は異物の侵入とイコールであるため、体内に存在しない抗原に反応する「武器」を免疫系は揃えている。

ここまでの話から考えると、A型の人は、A型(もしくはO型)の血液であれば問題なく輸血できそうだ。しかし、そうとも限らないのが難しいところだ。実際に、血液型が一致していても赤血球凝集が起きてしまうことがある。それが次の項だ。

赤血球凝集(ABO式血液型以外)

赤血球凝集を引き起こす抗体は抗A抗体抗B抗体だけではない。抗A抗体抗B抗体は規則抗体と呼ばれるが、こいつら以外にも不規則抗体という厄介な連中がいる。こいつらが、血液型が一致しているかに関わらず赤血球凝集を引き起こすのだ。

(注意!!)以下の説明は正確ではありません。わかりやすくするために抗Rh抗原、抗Rh抗体という単語を使っていますが、実際にはたくさんの種類の抗原と抗体が存在していて、それらをまとめて Rh系の不規則抗体と呼称します。

Rh+とかRh-とかいう単語を聞いたことがある人は多いと思う。これもこの不規則抗体と関連している。Rhというのは赤血球表面に発現している抗原のことだ。発現していればRh+になるし、していなければRh-だ。当然、抗原には抗体がつきものだ。Rh-の人はRh抗原に対する抗体を持っていて、Rh+の血液を輸血すると赤血球凝集が起こってしまう。このRh抗原に対する抗体、すなわち抗Rh抗体というやつが不規則抗体の一種だ。このようにA型とかB型とか関係なく、赤血球凝集は起こる可能性がある。

そしてさらにややこしいことに不規則抗体抗Rh抗体だけではない。ヒトの赤血球の表面に発現する抗体とそれに反応する不規則抗体のペアはもっと多く存在する。

不規則抗体にはRh系、Kell系、Duffy系、Kidd系、MNSs系、Lewis系、P系、Diego系、Xg系、Bg系、Jra系などが存在する。

とのことらしい。細かい名前は覚えなくていいはずだ。

本題

ここまでくるとようやく本題に戻れる。本題はなんだったか、交差適合試験である。交差適合試験とは、規則抗体も不規則抗体もひっくるめて赤血球凝集が発生しないことを確かめる検査である。輸血される側と輸血する側の血液の血液型が適合していることはもちろん、その他の不規則抗体が存在しないことを確かめて、はじめて安全に輸血ができるのだ。

国試でも問われている重要な点として、血液型の検査とは別のタイミングで行うというのがある。考えてみれば当たり前の話で、血液型が適合していなければ、交差適合試験をクリアできるわけがない。すなわち、輸血される側の血液型が判明して初めて、輸血すべき血液を用意して交差適合試験へと進める、ということだ。