血液検査

溶血

溶血に関する話題は頻出である。血液を採取した後に、何らかの外的要因で血液の細胞が破壊されてしまうと、その中身が血液の中にぶちまけられる。当然、物質の血中濃度は変化するし、正しい結果は得られない。重要なのは、溶血によって影響を受けやすい物質はなにかということである。ここを押さえておけば、その物質郡の不自然な上昇を溶血のサインと捉えることができる。当然、患者の体内で本当に溶血が起きている可能性もあるので、その点の鑑別も重要になるが、ここでは脇へ置いておこう。

溶血が発生したときに、濃度上昇が見られる物質として重要なのはK(カリウム)LDである。どちらも血球中の濃度が血漿中の濃度を上回る。LDってなに?って気になった人は別項を参照。今回の話にはあんまり関係ない。

もう一つ追加で覚えるとしたら肝酵素のASTおよびALTだ。どちらも血球中の濃度が高く、溶血によって上昇する。しかし、重要なのはその度合いだ。AST の方が上昇の幅が著しい。すなわちASTの濃度がALTの濃度を大きく上回っている、というのは溶血を示す所見と言える。しつこいがSの方が高い。ここを逆に覚えてたら意味がない。

溶血を示す初見をまとめると以下のようになる。

K↑
LD↑
AST >> ALT

LD(乳酸脱水素酵素)

体内のブドウ糖がエネルギーに変わる時に働く酵素。これだけ聞くとめちゃくちゃ重要だ、体を動かす時に必須だもん。でもあんまりにも重要すぎて、体の至る所に分布している。肝臓、心臓、血液、骨格筋、ほんとにどこにでも豊富にある。

つまり、LDが上昇している、というのはどこに異常があるか?という点に関してはほぼ手掛かりがない。肝臓の疾患、心筋梗塞、白血病や溶血性貧血、筋ジストロフィー、悪性腫瘍なんかでも上昇してくる。とにかくどこかの細胞が壊れているということはわかるが、それ以上の情報は他の検査結果を見てみるしかない。

全身に存在するため、事故などで体の至る所が損傷しているケースでは著しく上昇する。どちらかというと救急とかで重要になる検査項目かもしれない。