播種性血管内凝固症候群(DIC)

DICとはそもそもなんだろうか。略さずに読むと、Disseminated Intravascular Coagulation。日本語で言えば播種性血管内凝固症候群だ。どちらもわかりにくいので、ざっくりいってしまおう。播種性血管内凝固症候群(DIC)とは、血栓めっちゃできる病である。これを覚えるだけでも、症状や血液初見で迷った時も正解に辿り着ける可能性が上がるだろう。

血栓めっちゃできる病でもよいのだが、ちょっださい。言い換えると、DICの病態とは止血機構のバランスが崩れるということである。人体の止血機構というのは、血栓の形成血栓の溶解がお互いにバランスをとることで成り立っている。播種性血管内凝固症候群(DIC)では、これがおかしくなる。血栓の形成が著しく亢進し、大量の微小血栓が形成される。それを追う形で血栓の溶解も亢進する。最終的にどちらが優位になるかはケースバイケースであるが、血小板凝固因子は死ぬほど使われるので減少する。この血小板・凝固因子の減少は重要な血液所見。

血液所見

血小板減少

極めて重要。消費性に低下する。

APTT・PT延長

播種性血管内凝固症候群(DIC)では、血小板とともに様々な凝固因子が使用され、減少する。それを反映してAPTTとPTが延長する。どちらかしかみられないこともあればどちらも延長することもある。

FDP上昇

そもそもFDPってなに?という話だが、これはFibrin Degradation Productsといってフィブリンの分解産物である。フィブリンというのは血栓の材料である。DICでは、血栓の形成と溶解を繰り返すので当然上昇する。FDPというのは、DICに対して最も敏感な検査値であり、重要である。

Dダイマー上昇

これは実はFDPの一種。DICではFDP同様に上昇する。

余談:Dダイマーというのは、Dが二つという意味である。FDPの中でもDD分画という構造をしているものを特別にDダイマーと呼ぶのだ。このDD分画というのは安定化フィブリンにしか存在しない上、プラスミンによって分解されない。そのためDダイマーの上昇はプラスミンによって安定化フィブリンが分解されたことの証明になる。

破砕赤血球

これ知ってる?僕は知らなかった。破砕赤血球と言えば、TTPHUSのイメージがあるが、DICでも出現するらしい。でも特異的ではないのでそれほど重要ではなさそう。

基礎疾患

敗血症

DICと言われてぱっと思い浮かぶのはこれかもしれない。細菌感染症が主な原因。

急性前骨髄球性白血病(APL)

絶対に忘れてはいけない。敗血症と同じくらいの速度で出てこないとダメ。僕はよく忘れます。APLといったらDIC、DICといったらAPL。

常位胎盤早期剥離・羊水塞栓症

妊婦さんの疾患にはDICの基礎疾患となりうるものが多いよーっていうのは重要。

メカニズムと症状

根本的な話をすると、播種性血管内凝固症候群(DIC)は、血中に組織因子が増えることでトロンビンの産生が止まらなくなる疾患である。そこに抗凝固系線溶系の抑制が加わることで一気に血栓ができやすくなる。(線溶系が抑制されると書いたが、DICを発症して血栓が大量に形成されると亢進に転じる)

血栓形成

ここまでの説明から、当然ではあるが血栓が形成される。もっと詳しくいうと微小血栓が大量に形成される。そのため、血小板屋凝固因子が消費性に低下する。そうすると今度は本当に血栓を形成したいときに形成できなくなる。無駄遣いの末路だ。DICでは出血傾向をきたす。

臓器不全

DICで形成される血栓は微小血栓なのだが、これはフィブリンの沈着と言い換えることができる。フィブリンの沈着は重要な臓器の循環不全を招く。多臓器不全はDICの症状として非常に重要である。