⑤急性前骨髄球性白血病(APL)

急性白血病のラストを飾るのが、白血病の中でもトップクラスの出題率を誇るAPLだ。覚えるべき特徴を覚えてしまえば楽勝だ。今回は先に覚えるべきことを列挙する

  • 画像所見
  • 染色体異常
  • DICの合併
  • 全トランスレチノイン酸

たったこれだけだ。しかもややこしいのは画像所見だけ。ここさえ乗り切れば安心だ。

画像所見

白血病を画像で診断させる問題というのはよく出る。遺伝子検査や表面抗原のフローサイトメトリーというのは時間がかかるので、とりあえず顕微鏡で見てみて白血病を疑えるかどうかというのは、日常診療において極めて重要になるらしい。

APLに特有な染色像というのはいくつか存在し、Auer小体faggot cellアズール顆粒が挙げられる。しかしこの名前を聞いただけでわかる様になれば苦労はしない。見分けるポイントはツブツブがたくさんあること束状の構造物だ。ツブツブに関してはわかりやすいが束状の構造物は少し難しいかもしれない。要は短い線が集まったものが細胞の中に見られるということだ。補足しておくとこれはfaggot cellの特徴である。ツブツブはアズール顆粒。今言った特徴を次の画像で確認してみて欲しい。

APLの染色像

染色体異常

APLに特有の染色体異常が存在し、t(15; 17)である。これは15番染色体17番染色体の転座を意味している。

一個(1, 5)だけ予後いい(1)な(7)、これでt(15; 17)だ。予後良好ということも併せて覚えられる。

DICの合併

これはAPLの大きな特徴の一つでありよく狙われるポイントだ。DICを合併しやすい。原因は腫瘍細胞の放出する組織因子が関わっているらしい。このDICの合併が重要な理由としては、致命的であるDICの病態が複雑などが考えられる。DICになるとどのようなことが起きるかというのは非常に重要であり、様々な検査値も関わってくるので、DICの復習をすることが大事かもしれない。

ATRA

最後は治療薬だ。めっちゃよく聞かれる。もうATRAといったらAPLだし、APLといったらATRAだ。ATRAとは、全トランスレチノイン酸の略であり、ざっくりいうとビタミンAだ(正確には誘導体)。こいつを入れてやると、異常細胞において分化を抑制している、コリプレッサーというやつを取り除いてくれる。すると好中球の前段階(前骨髄球)で分化がストップしていた白血病細胞が再び分化を再開する。そうして成熟好中球となった白血病細胞は、通常の好中球と同じ様に数日で寿命を迎え、アポトーシスに至る。この寿命で死ぬというのが結構重要で、他の多くの抗癌剤より優れている点である。急激に細胞を殺すというようなことをしないため、副作用も少なく、効果も高い。このATRAがあるからこそAPLは予後良好と言われているのである。ATRAがなければ高率にDICを合併する致死的な疾患となりうる。APLにおいては、早期の診断・ATRA投与開始が非常に重要ということだ。