④急性骨髄性白血病(AML)
さて、ついに真打登場だ。白血病の中でもAMLはややこしい。そもそもAMLの中でM0〜M7の8つに分類されているのが驚きだ。とても一つの疾患として扱えるボリュームではない。さらに染色や画像所見の違いという細かい点に出題の焦点が当たることが多いのも厄介な点だ。8つのAMLについて全てを細かく勉強していたらきりがないので、全体像をさらった後に重要と思われるM3、すなわちAPLについて詳しく見ていくのがいいと思う。AMLはAPLかそれ以外かの診断がつけば、問題を解けると言っても過言ではないはず。
全体像
まずは全体像を見ていこう。まず大前提として、AMLは骨髄系の細胞に由来する白血病である。骨髄系の細胞とは?と思った人は以下の図を見てみよう
ご覧の通り、骨髄系の細胞とは赤血球や血小板や好中球などだ。単球もここに入る。リンパ球以外の血球と言い換えるのもわかりやすい。だから骨髄系の細胞にはいろんな種類の細胞が所属している。だからAMLはあんなに細かく分類されているのだ。骨髄系幹細胞の分化の流れをより詳細に見てみよう。
だいぶ図がややこしくなってきたが頑張ろう。大まかにいって赤血球、血小板、それ以外の3つのルートがある、という理解で問題ない。そして白血病の原因細胞というと好中球のような細胞の系列を思い浮かべるかもしれないが、赤芽球系や巨核芽球系の白血病というのも存在し、M6・M7に分類される。が、重要度は低い。よく出題されているのは好中球や単球の系統に所属する細胞から生じる白血病である。図でいうと顆粒球単球系から好中球や単球までの流れの中にM0からM5の原因細胞が存在することになる。というわけで、次はそこのところを詳しく見てみよう。
今回は対応するAMLの分類も記載しておいた。この図は100%正確なものではないし、全て覚える必要もない。だが特徴を掴むことができる。まずM1からM3は好中球系であり、M4およびM5は単球系であるということは覚えても損はない。そして番号が若いほど分化の度合いも若いということもわかる。例えば、今後のテーマとなるAPLつまりM3は名前に前と入っているが、比較的分化が進んだ細胞から生じる白血病だということがわかる。あくまで傾向の話ではあるが、癌は未分化なほど予後不良になりがちである。この様に考えると、M3は白血病の中でも比較的予後良好な疾患であると覚えやすいのではないだろうか。(もちろん分化度だけで予後が決まるわけではない)
全体像の補足:染色について
最後に補足として、白血病の分類に用いられる染色について説明しておこう。ここでの登場人物は二人で、ミエロペルオキシダーゼ染色とエステラーゼ染色だ。この二つをごっちゃにしない様に注意しよう。
まずはALLの診断にも用いられるミエロペルオキシダーゼ染色からだ。ミエロペルオキシダーゼは好中球に豊富に含まれているが、単球系の細胞にも存在する。というわけでAMLについては全てミエロペルオキシダーゼ(+)となってくれれば話が早いのだが、(ー)のやつも存在する。具体的には、M0とM7がそうだ。細かい番号はどうでもよいので、ミエロペルオキシダーゼ陰性=ALL、とは言えないということだけ覚えよう。
次がエステラーゼ染色。これは好中球系列の細胞なのか単球系列の細胞なのかを見分ける染色だと考えればよい。エステラーゼというのは、好中球系にも単球系にも存在する酵素なのだが、二重染色という方法を用いることで両者を区別している。そのため次の表現は正確ではないが、陽性だったら単球系列の細胞と覚えていれば問題は生じない...はず。
図にもまとめておこう。