③骨髄性とリンパ性の違い
今回は、急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の違いを見ていこうと思う。そのあとは、急性リンパ性白血病に着目しよう。骨髄性の方は、さらに細かく分類されていてややこしいので後回しだ。ちなみに、慢性白血病にももちろん骨髄性とリンパ性が存在する(CMLとCLL)。しかし、AMLとALLに比べてCMLとCLLは違いがはっきりしている(気がする)。CMLとCLLも重要な疾患であるが、鑑別が問題となることはあまりない。

今回は、AMLのことを骨髄性、ALLのことをリンパ性と呼ぶことにする。
そして骨髄性とリンパ性と違いを理解するためには、造血幹細胞の分化の流れを抑えておく必要がある。造血幹細胞はどんどん分化していき、最終的には、赤血球・血小板・好中球・マクロファージ・T細胞・B細胞、などなど様々な細胞になる。そのため分化の流れも結構ややこしいが安心して欲しい。今回出てくるのははじめの一歩だけである。
造血幹細胞にとってのはじめの一歩が、骨髄系とリンパ系の2択である。そして、骨髄系を選んだ細胞には好中球や赤血球、血小板といった未来が、リンパ系を選んだ細胞にはリンパ球(T細胞・B細胞・NK細胞)の未来が残されることになる。一度選んでしまえば後戻りはできない。そして、骨髄系を選んだ細胞から生じる白血病が急性骨髄性白血病であり、リンパ系を選んだ細胞由来であれば急性リンパ性白血病となる
急性リンパ性白血病(ALL)
小児が多い、ミエロペルオキシダーゼ染色(-)、小児によく起こる、予後は比較的良好、大人に起きるとちょっとやばいかも、フィラデルフィア染色体があればなおさら、フィラデルフィア染色体に対してはイマチニブを使う。基本は多剤併用化学療法。
急性白血病として、最初にALLからみていこう。ALLは比較的覚えるべきことが少なく、とっつきやすい疾患だと思う。ALLはリンパ系の幹細胞や前駆細胞が癌化して起きる症状である。リンパ球の癌化といえばリンパ系腫瘍も同様の病態である。ALLとリンパ系腫瘍は、リンパ球が腫瘍化するという点に着目すると同一の疾患である。一応の違いは、腫瘤の有無である。癌細胞が骨髄や末梢血に分布しているような場合は、急性リンパ性白血病と呼ばれるし、リンパ節などに腫瘤を形成するのならば、リンパ系腫瘍もしくは悪性リンパ腫と呼ばれる。ちなみにWHOの分類では急性リンパ性白血病とリンパ系腫瘍は同一の疾患として扱われている。悪性リンパ腫と病態が同じというのは大事なので覚えておこう。
リンパ性(ALL)が骨髄性(AML)と違う点としては、ミエロペルオキシダーゼ染色(ー)が挙げられる。そもそもミエロペルオキシダーゼとは、好中球が豊富に持っている、異物を攻撃するための酵素だ。そして、ALLの原因細胞はすでに好中球とは袂を分かっていることは上の図をみればわかる。そういうわけでALLはミエロペルオキシダーゼ染色(ー)だ。ちなみに国試では、ミエロペルオキシダーゼ染色が画像として出題されている。ミエロペルオキシダーゼは黄褐色・黒褐色・青色と様々な色に染まる可能性があるらしく、一見しただけではなかなかわからない。黄褐色であれば(+)と判断してよいだろうが、(ー)と確信をもって答えるのは難しい。しっかりと画像を確認しておいた方がよいかもしれない。
さらにALLの特徴として重要なのが小児に好発するという点だ。そして小児のALLは予後がかなり良い。この後解説する様に、ALLの治療は多剤併用化学療法が基本である。しかし、小児に限ってはプレドニゾロン(ステロイドの一種)が良く効き、それだけで白血病細胞(芽球)が激減することもあるそうだ。ALLの予後の違いや小児領域の問題でも狙われるということは覚えておこう。
最後は治療だ。多くの白血病やリンパ系腫瘍と同じく、ALLでも化学療法が極めて重要である。アドリアマイシンやメトトレキサート、シタラビンといったような抗癌剤を用いることになる。少し変わっている点としては、ALLではフィラデルフィア染色体が陽性になるケースがしばしばある。フィラデルフィア染色体は、慢性骨髄性白血病(CML)でも見られる9番と22番の染色体転座であり、ALLにとっては予後不良のサインである。このフィラデルフィア染色体が陽性の症例に対しては、イマチニブを用いることがある。CMLの第一選択薬が使われるケースもあるということは大事かもしれない。
補足:ALLは中枢神経浸潤を起こすという特徴も持っている。そのため抗癌剤を髄注することも多い。