②急性白血病と慢性白血病の違い
一番大事なことを最初に述べる。急性白血病と慢性白血病の違いは、*症状が急激に発症するかどうか*ではない。もちろん急性白血病は週から月単位で症状が出現するし、慢性白血病は数年単位で進行し、検診で偶然見つかることもある。しかし、症状の経過以上に重要な違いがある。それは白血病細胞の性質である。
白血病細胞が分化能を有しているかどうかが非常に重要であり、急性白血病で出現する白血病細胞(芽球とも呼ばれる)は、分化能を喪失している。その一方で、慢性の白血病における白血病細胞は、癌化しているものの分化能はある程度保たれている。そのため急性白血病においては、中間の分化度の血液細胞が消失する。未熟な白血病細胞か元からいた成熟した細胞のどちらかしかいなくなってしまうわけだ。この状態を専門用語で、白血球裂孔という。慢性白血病においては白血病細胞がある程度の分化能を有しているのでこのような現象は起きない。そして、症状の経過の違いもこの分化能の有無で説明できなくはない。急性白血病においては分化能が失われているため、白血病細胞は分化のことを考えることなくただひたすらに増え続けることができる。そのため増殖のスピードが速く、症状も劇的な経過を辿る。
さらに分化度の違いは、白血病特有の現象を引き起こす。普通の病気では、急性の疾患が長引くことによって慢性化する。感染症や肝炎は良い例だと思う。しかし、白血病では、白血病細胞が一度失った分化能を取り戻すことはないので、慢性化は起こらない。一方で逆はありうる。慢性白血病で、分化能が保たれていた白血病細胞が分化能を失うと急性に転化する。実際に、慢性骨髄性白血病はしばしば急性に転化することが知られており、その際の治療は非常に困難である。