ホジキンリンパ腫

TL;DR

まずは悪性リンパ腫について

ホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫の一種である。当たり前に聞こえるかもしれないが悪性リンパ腫というのは、リンパ球が癌化する疾患である。ところでリンパ性白血病という疾患をご存知だろうか、あの疾患もリンパ球が癌化する(ALLが代表的)。悪性リンパ腫リンパ性白血病の本態はリンパ球の癌化であり、本質的には同一の疾患である。しかし、名前が分けられているのには当然意味もあり、悪性リンパ腫と呼ばれている疾患は腫瘤を形成しやすいという特徴がある。白血病だったら腫瘤ができないというわけではないので、あくまで傾向の話ではあるけれど、そういう違いがある。

ホジキンリンパ腫はそんな悪性リンパ腫の中でもかなり幅を効かせている疾患で、悪性リンパ腫はホジキンかそうでないかで分類されているくらいだ。一応、ホジキンリンパ腫にはHodgkin細胞Reed-Sternberg細胞という組織学的特徴が存在するから区別されていると言われているが、ぶっちゃけわかりにくい。Hodgkinリンパ腫も成熟B細胞由来の疾患の様なので、悪性リンパ腫の中でB細胞由来のものとT細胞由来のものに分類した方がわかりやすいような気がする。現状の分類の仕方だと、Hodgkinリンパ腫はB細胞でもT細胞でもない細胞から発生しているように思えて仕方ない。分類方法への文句は尽きないのでこの辺にしておく。

症状

ホジキンリンパ腫の症状としてはまずリンパ節腫脹があげられる。悪性リンパ腫なんだから当たり前だ。加えて重要なのが全身症状である。発熱・盗汗・体重減少の三つの全身症状を合わせて、B症状という。

ところでなぜB症状と呼ぶか知っているだろうか。これはステージングの都合である。悪性リンパ腫も他の悪性腫瘍と同様に、症状や腫瘍の部位によって病期分類を行う。この時に用いられる分類方法はAnn Arbor分類と呼ばれる。癌のステージングだから、ⅡAとかⅢBという感じで分類されているのだが、B症状はこのステージングにおいてAかBかを分ける重要な指標である。具体的には、発熱・盗汗・体重減少が全てなければA、一つでもあればBだ。症状が一つでもあればステージングがBになるからB症状と呼ぶ。

 分類についてさらに補足すると、ⅡとかⅢといった数字の部分は腫瘍がどれくらい広がっているか?で決める。そのためHodgkinリンパ腫だと確定したら、その広がりを調べるのが必須になる。その時に有用となってくるのが、X線・CT・FDG-PETといった画像所見だ。一方で、そもそもHodgkinリンパ腫かどうか?を決める確定診断をするときは画像所見は役に立たない。腫瘍の生検によるHodgkin細胞Reed-Sternberg細胞の検出をもってHodgkinリンパ腫と診断しなければならないからだ。確定診断と病期分類では手法が異なることは理解しておこう。

治療

さて治療だ。これが覚えにくい。悪性リンパ腫であるホジキンリンパ腫に対しては化学療法を中心に治療を進めていくことになるわけだが、とにかく抗癌剤がいっぱい出てくる、その上、他の疾患とも混じりやすい。最低限以下の対応だけは抑えておくことをお勧めする。

ホジキンリンパ腫 ABVD療法
非ホジキンリンパ腫 R-CHOP療法

とにかくABVDとR-CHOPをごっちゃにしないようにだけ注意しよう。具体的にAの抗癌剤がなんて名前かとかはその後だ。リツキシマブはホジキンリンパ腫には使わない、これ大事。

ちなみにABVD療法の他にBEACOPPという治療方法もある。これは7剤併用というとんでもない治療だ。あくまで標準はABVDだが進行例など予後が不良なケースで生存期間を伸ばせるかもしれない...ということになっている。

行儀が良い

最後にホジキンリンパ腫のちょっとした特徴を述べておく。ホジキンリンパ腫は非ホジキンリンパ腫と比べて、お行儀が良い。これは発症部位や進展様式がわかりやすいという意味だ。ホジキンリンパ腫は、ほぼ確実にリンパ節から発症し隣接しているリンパ節へと進展していく。一方で、非ホジキンリンパ腫は病気にもよるが、半数弱がリンパ節以外から発症しあらゆる臓器に非連続性に転移する可能性がある、とかなり読みにくい疾患になっている。Hodgkinリンパ腫は比較的予後良好と言われるが、その原因はお行儀の良さにあるのかもしれない。

補足:CD15

どうやらホジキンリンパ腫にあって非ホジキンリンパ腫にはない表面抗原があるらしい。それが件のCD15だ。ホジキンリンパ腫がリンパ系腫瘍の中で別格の扱いを受けているのは表面抗原の違いによるものなのかもしれない。CD20が発現していないというのも、リツキシマブが効くかどうかという治療に関わった話になってくる。きっちりまとめておく。

ホジキンリンパ腫 CD15やCD30
非ホジキンリンパ腫 CD20

補足②:AAVD療法

ホジキンリンパ腫の治療の基本は、ABVD療法だが、現在はAAVD療法というのもある。これは従来のABVDからビンクリスチンを外して、アドセトリスを加えたものである。ちなみに、5種類全てを使わずにブレオマイシンが外されているのは、ブレオマイシンの肺毒性が極めて高いからだそう。アドセトリスというのは商標であり、薬剤名はブレンツキシマブ ベドチンという。抗CD30モノクローナル抗体である。

ちなみに、ダカルバジンすなわちDは、血管痛吐き気の副作用が強いらしい。