甲状腺腺腫総論
甲状腺が腫れることを甲状腺腫という。甲状腺腫の原因疾患は様々である。ホルモン生合成の異常、ヨウ素の欠乏、自己免疫疾患、などが挙げられるだろう。そもそもこういった病気で甲状腺が腫れてくるのはなぜだろうか?考えてみた。
TSH受容体の刺激
最もメジャーな原因だろう。バセドウ病はこれ。バセドウ病においてはTRAb、すなわちTSH受容体抗体がみられる。こいつがTSH受容体を刺激することで甲状腺が成長しようとして腫れる。
甲状腺ホルモンの低下
実は甲状腺ホルモンが欠乏することと甲状腺腫はイコールである。メカニズムを説明しよう。ネガティブフィードバックの考え方によると、甲状腺ホルモンの低下はTSHの上昇を引き起こす。TSHというのは甲状腺を刺激するホルモンである。ホルモンが作れていない現状をなんとかするために甲状腺を成長させようとする。その結果、甲状腺が大きくなるのだ。
甲状腺ホルモンの低下は、甲状腺腫を引き起こす。
橋本病
橋本病は甲状腺機能低下症である。甲状腺ホルモンの合成が低下することで、TSHが上昇し、TSHの刺激によって甲状腺が成長する。その結果甲状腺が腫れる。橋本病においては、リンパ球浸潤や免疫系による成長因子も甲状腺腫形成の原因となっているらしい。
ヨウ素の欠乏
前提知識としてヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に必須というのは覚えて起こう。つまりヨウ素が足りなくなるということは甲状腺ホルモンを作れなくなるかもしれない緊急事態なのだ。この緊急事態に対応するため、甲状腺はTSHに対して敏感になる。そのため、TSH自体はそれほど上昇していなくても、甲状腺が腫れてくる。ちなみにキャッサバが甲状腺腫の原因になることがあるらしい。
甲状腺腫の種類
単純性甲状腺腫
甲状腺腫では硬い結節があるかどうか?甲状腺ホルモンを産生するのか?といった点が非常に重要である。この2つの問いにNoと答えるのが単純性甲状腺腫である。結節や甲状腺機能亢進症を伴うことなく、ただ腫れるだけ。英語ではsimpleな甲状腺腫と言われる。
風土病
特定の地域で人口の5%以上に甲状腺腫が見られる場合がある。これはその地域の特徴に原因がある疾患、風土病ということになる。大体の原因はヨウ素の欠乏である。英語ではendemic goiter。
悪性リンパ腫
甲状腺にリンパ腫が発生することがあるらしい。知らんかった...
慢性甲状腺炎が基礎疾患にあるらしい。甲状腺腫自体は十年以上前からあったんだけど、最近急に腫れてきた、みたいなケースでは慢性甲状腺炎に続発する甲状腺悪性リンパ腫を疑うべきらしい。ちなみに甲状腺機能は低下する。ちなみに橋本病=慢性甲状腺炎らしい。これも知らんかった...